当記事を覗いていただき、ありがとうございます。
中島です。
ここ数日(2018年9月下旬)、ロシアを賑わしている話題があります。同国第二の都市サンクトペテルブルグの女子大学生が、地下鉄で脚を大きく広げて席を占めている男性に接近し、高濃度の漂白剤を含む水を股にかけて回っているという話題です。
こちらの国内ニュースで映像を見ることができます。
液体を掛けているのは地元の大学生でフェミニズムの活動家アンナ・ドヴガリュクさん。同じ活動をしている仲間が撮影した動画をyou tubeに投稿し、ニュースで報道されてから話題を呼びました。視聴者の一部からは、プロの映像制作会社を利用してフェイク動画を作成したという疑義がもたれましたが、当制作会社は関与を明確に否定しました。
(写真は360tv.ruより)
活動家本人は、男性特有のこうした行為への抗議と主張しています。「地下鉄で女性や子供の前で”強いオス”を示す男性には、辱めが加えられる必要がある。もし公の場で”男”を演出したいなら、私たちがその熱を覚ましてあげる。」とコメントし、「70匹が被害に遭った」と発表しました。単に男性が迷惑行為をしているということへの注意喚起ではなくて、性差別への抗議といった側面が大きいように思えます。
男性が公共交通機関において大股で席を占める行為は、「マンスプレッディング(Manspreading / Менспрединг)」と呼ばれるそうです。スペインのマドリードやニューヨークなどでは、マンスプレッディングは迷惑行為であるとして止めるように呼び掛けているそうです。
(マドリード市内のバス車内のマナーポスター AFP通信より)
私のような典型的な自動車社会の田舎に住む者としては全く縁のないことですので、今まで問題意識が全くなかったです。
活動家への世間の評価と批判
今回の事件では、多くの非難の声があがっています。まず、被害に遭った男性への衣類に対する補償や、得体の知れない液体を掛けたことにより仮にケガを負わせてしまった時などへの責任をどう取るのか、といった批判です。また、炎上させたいだけだとの批判も見られました。
実際、アンナ・ドヴガリュクさんらが投稿した動画に対して「いいね」と評価する人もいましたが、その反対を示す「バッド」はその20倍を獲得(9/27現在)しています。
この問題には、社会的に影響力のある人々にも注意を向けさせました。あるロシアの国会議員は、「精神病院へ送る必要がる」とコメントを発表しました。しかし、一方で、"360tv.ru"によると、ロシアの元サッカー選手アレクサンドル・モストヴォイ氏は同メディアとのインタビューで、「漂白剤をかけるのは行き過ぎた行為だが、アピールにはなっただろう。私自身、このような無作法を長年見てきた。」と一部擁護する発言をしました。
フェミニズム活動へ厳しい目を向ける批難もあります。特にロシアでは、ロシア正教会(キリスト教の一派)に由来する伝統的な価値観が根付いており、恋愛や結婚は男女が行うもの(同性愛の否定)という家族観や、フェミニズムの考え方が比較的強い欧米のリアリズム的発想を毛嫌いする人も多いです。そのような保守的な考え方をもつ人々からは、「(女子大生を)西欧へ追いやるべきだ」といった厳しい批判がきました。
今回の騒動にかかわらず、一般的にマンスプレッディングへの抗議自体を批判する主張もあるようです。その内容としては、①男性だけではなく、大きいバッグをもったり、だらしない恰好をしたりして席を余計に陣取っている女性も多い。②男性の生物学的な人体構造からして、大股座りでないと座りにくい。といった理由でマンスプレッディングを逆に批判する声もあるそうです。