当記事を覗いていただき、ありがとうございます。
中島です。
久しぶりにロシアのニュースを取り上げたいと思います。
年金の支給開始年齢を引き上げる法案
ロシアでは最近、年金改革に関する話題がメディアで多く取り上げられています。先月のW杯開催前後にメドベージェフ首相が年金の支給年齢を段階的に引き上げる法案を下院に提出していました。
W杯開催の裏で、あまり大きく取り沙汰されませんでしたが、法案のニュースが知られると、国民は即座に大反発、反対集会などが活発的に行われました。
年金支給年齢の引き上げ(男性は60歳→65歳、女性は55歳→63歳に段階的に引き上げ)は、社会保障関連費増大が政府予算のバランス悪化に拍車をかけてしまうことがその主因であるとされています。
ロシアでは欧米からの経済制裁の他、原油価格低迷やルーブル安による長引く景気低迷で、近年、連邦予算の苦しいやりくりが露呈し始めました。2年前には、種々の国営企業の一部民営化がよくメディアで話題となっていました。
プーチン大統領の態度変更
エコーモスクワ、インターファックス通信など各種大手メディアは、プーチン大統領が今日行った年金改革に関する演説を一斉に報道し始めました。演説の主旨は、
●年金制度存続のためには、支給開始年齢の引き上げは不可欠としたうえで、
●女性の支給開始年齢の63歳への引き上げは60歳までの引き上げとするという法案修正
です。
特に、後者については、「わが国では、女性に対しては特別に大切に接する。」と説明を加えました。
BBC(露語版)は、プーチン氏の演説を批判的に報道。2005年や2007年に同氏が「支給年齢の引き上げは必要ない(反対だ)」と公言している映像と、態度を変えた今回の演説の映像を比較するような動画を作成しています。
主要人物の反応
BBCはまた、プーチン大統領の演説について、政治とのかかわりが深い各主要人物の反応を紹介しています。
●シルアノフ財務相
プーチン大統領が提案する年金改革の修正案を実現させるためには、年金基金の収支計画を(再)検討する必要がある。修正案をもとに計算すると、6年間で約5,000億ルーブルの費用を捻出する必要性が生じる見通しが立つ。
●クドリン露会計検査院議長
大統領の修正案は、年金改革の賛成派、反対派の両方の言い分をうまく聞き入れたバランスの取れた案で、国の利益に資するために熟考された案である。
●ナヴァリヌィ氏
この人は、ロシアでも影響力のある反体制派指導者です。自身のSNS上のページで、「なぜプーチンは恐れたのか?ー図を用いて説明ー」と題する記事を投稿しました。
電話で独自に行った複数の世論調査のうち、例えば「年金支給年齢の引き上げについてどう思いますか?」という質問の結果として、 83%のもの人が反対と答えたなどと批判的に説明しています。
(ナヴァリヌィ氏のツイッターより)
事実として、年金改革法案が提出されると、プーチン大統領の支持率は急落したことが知られています。
ナヴァリヌィ氏はこうしたデータがプーチン大統領を恐れさせ、柔軟策を発表せざるを得なくなったと言及しています。
また同氏は、年金支給年齢の引き上げに反対する抗議集会を来月9日に行うとして、ツイッター上で呼びかけています。
(ナヴァリヌィ氏のツイッターより)