現役ロシア語講師によるロシア語勉強法

~ロシア語ガチ勢のためのブログ~

одеть (着せる)という動詞はなぜ、着せる相手を対格にするのですか?(ロシア語生徒さんからの質問 NO.45)

こんにちは!

私は現在、21名の方にロシア語をオンラインと対面方式でほぼ毎日教えております。その中で、受講生さん達から日々質問を受けます。その中の一部をこれより定期的に配信していきます!あなたのロシア語学習の一助、最低でも励みになれれば幸いです。

 

 

ロシア語生徒さんからの質問 NO.45

🍏質問:одеть (着せる)という動詞はなぜ、着せる相手を対格にするのですか?着(せ)る衣類を対格にする方が自然のような気もします。

 

🚩回答:日本語で目的語を「~を」とするような動詞の場合、ロシア語で対格支配することが多いですが、必ずしもその通りに合致するわけではありません。

 

日本語とロシア語は互いにリンクしているわけでもなければ、どちらかがもう片方の文法ルールに合わせようとしているわけでもないので、日本語や日本人的な発想を基準とした頭でロシア語を推し量ったり理解しようとしたりすると説明がつかないことが多くなってきます。

 

ロシア語の動詞は接頭辞がヒントを与えてくれることが多いです。

 

接頭辞о- や об- は、その一つとして「全体的に/包括的に」という意味が隠されています。

 

そして傾向として、目的語の対格を人(や動物)にして、「その人に対して丸ごと~する」というニュンスになります。

 

(例)

・одеть+対:対(人)に衣類を着せる

・обокрасть+対:対(人)から財産を丸ごとはぎ取る

・оплакать+対:対(人)の死を悼む

・одарить+対:対(人)にたくさんの物を贈る

・облить+対:対(人)に液体をぶちまける

 

このような動詞の場合、対格の目的語さえ明示すれば十分で、具体的にその人に「何を使ってその行為をしたのか」を明示しなくても良いことも多いです。

 

одеть の場合、具体的に何を着せたのかを明示しなくても不自然ではありません。

 

(例)

*Артур одел ребёнка. アルトゥールは子に服を着せた。

*Меня обокрали в Италии. 私はイタリアで追い剥ぎに遭った。

*Мы всей семьёй оплакиваем хорошего друга. 我々は家族一同、よき友の死を哀しんでいる。

 

このように対格が優先的、優越的に目的語の多くを語っていることを「対格上位格論」と言います。

 

大切なことは、杓子定規的に ”対格=日本語の「~を」” という根拠のない日本語とロシア語のダイレクトな紐づけをしないことだと思います。

 

ロシア語を勉強する以上は、ロシア語的な発想を身に付けることにより、結果的に研鑽が深まり、また視野が広がることになります。