こんにちは、中島です。
中級レベルの色々な受講生様からよく、「格変化が難しいです」「変化するのに時間がかかるので、発話できません」という相談を受けます。
例えば、会話で「私たちと一緒に」と言いたい場合、「~と一緒に」は с + 造格で、私たち мы の造格は нами、 よって、с нами という。
もう少し複雑な文になると、
「私はすでに新しい生活リズムに慣れました。」と言いたい場合は、「~に慣れる」というのはпривыкнуть к + 与格ですので、新しい生活リズム = новый ритм жизни を極めて短い時間内に与格変化させなければなりません。
思考回路としてはこうです。まず、
①ритмは男性名詞単数なので、новыйは男性単数形に変化
②новыйの男性単数の変化の仕方は、номову
③ритмの男性単数の変化の仕方はритму
この①から③までの各プロセスにおいて、全部時間がかかってしまいます。また、変化の形が命の который も、会話においては瞬時に変化させる必要があります。
こうした複雑なプロセスにネイティブスピーカーはどう対処しているのでしょうか?私が昔気が付いたことを3点にまとめて述べたいと思います。
1)ある程度のフレーズが”音”として脳に記憶されている。
最初に例として挙げた「私たちと一緒に」は、まさかネイティブはいちいち格変化を頭ではしていません。с нами を一つの音(スナーミ)として、概念とこの発音を瞬時にリンクさせているだけです。
どんな人間でもそうですが、日常生活(家庭、職場等)でその人が使う単語や使うクセのある表現はある程度決まっています。また、超頻出用語は格変化するほどまではなく、すべて音として記憶されています。
ロシア語のネイティブは幼い頃から、無数のこうしたコロケーション(互いに結びつきやすい単語)を毎日大量に耳にしたり、発話したりしているので、当たり前のことです。
с нашим ребёнком, за нами, перед нашими глазами, к этим женщинам など、この程度の短い繋がりの言葉であれば、ネイティブの脳には理屈抜きに丸ごと記憶されています。だから、即座に口から出てくるのです。
あなたがロシア語を学び始めた頃、「スパコーイナイ・ノーチ!」の形容詞спокойный が女性単数の変化の仕方をする理由など考えましたでしょうか? それと同じことです。
2) 形容詞の語尾の変化を瞬時にできるよう訓練されている。
では、先ほどの「新しい生活リズム・・・」のような少々複雑な文については、どうでしょうか。ритм という単語はネイティブにとっては頻出単語です。
どんなにロシア語文法の規則を知らないネイティブ(意外と多いです!)であっても、この名詞が単数である場合、結び付く形容詞・形容動詞の語尾変化のパターンは原則的に -ого, -ому, -ый, -ым, -ом の5通りしかありません。
当例文のように、к の後に続く形容詞の語尾は -ому というのが「何となくしっくりくる感覚」なので、即座に変換が可能なのです。
これが仮に女性単数であれば、ほとんどの語尾が -ой、なので尚更簡単です。
3) そもそも который などの関係接続詞は口語ではあまり使われない。
ロシア語はその文体が口語に近づくにつれ、一つの文の長さが短くなっていきます。このため、который などの文を長くするための単語は回避される傾向にあります。
例えば、Я знаю одного парня, у которого девушка живет в далекой стране.というような複雑な文の組み立て方はふつう口語ではしません。
日本人も、「私は、その彼女が遠い国に住んでいる若者を知っています」という言い方を会話でするでしょうか?
ロシア語の会話では、я одного парня знаю. Девушка живет в далекой стране.こんな感じです。
私たち外国人がロシア語の会話をできるだけスムーズに行うためのヒントが以上3点に隠されています。
3)については、私たちも会話においては、同じように который を避けて話すことで、無駄な格変化をしないで済みます。
また、1)、2)については、日ごろから私たちが
◆脳内で格変化する訓練を多くし、
◆実際に多く発音・音読し続ける
訓練が一番の再現性を確保する方法となるでしょう。
2個前くらいの記事でも書きましたが、紙面上や頭の中だけでロシア語を話したり、格変化したりするだけでは、口からロシア語が出るようにはなりません。
上記例のс нашим ребёнком でも за нами でも перед нашими глазами でも к этим женщинамでも、より多く発音してください。(この際、もちろん、その変化の理由が自分で説明できることが前提となります。)そのうち、自分の脳内で自然と瞬時に格変化できる単語や能力が徐々に養われていきます。
以上です、ありがとうございました。
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