現役ロシア語講師によるロシア語勉強法

~ロシア語ガチ勢のためのブログ~

ロシア語を和訳するときに一番大切にしなければならないことについて

 

 ロシア語の文章や単語の和訳について、「~という日本語でも良いですか?」という質問を日頃から多く受けます。

 

 それが文章ならば日本語の添削をする余地は十分にありますが、単語レベルなら「そこまで悩む必要はないのではないか?」と思うことが少なくありません。

 

 例えば、знаменитый とизвестныйという形容詞の訳し方について、известныйが「有名な」という訳ならば、знаменитыйはどう訳せばよいか?という質問を受けたことがあります。

 

 結論を言えば、両方とも「名が(世に)知られている」という意味では一致しているので、знаменитыйも「有名な」と訳しても全然かまわないと私は思っています。

 

 それよりもより大切なことは、”なぜ私たちは和訳するのか?”というその本来の意義を考えることです。

 

 ロシア語を知っている人からしてみれば、知らない人のためにロシア語の会話や文章を訳して理解させることが「和訳」の最終目的です。

 

 つまり、当事者である私たちは、どういった日本語の単語をзнаменитыйに固定的に当てはめていくかというよりも、「私たちの和訳を必要としている人」の目線に立って、その人にとって一番理解しやすい日本語を一つひとつ選択していくことに軸を置くことの方が肝要です。

 

 なぜなら、その人は私たちが紡いでいる日本語訳でしかロシア語の原文を理解する術を持たないからです。знаменитыйは硬い文章としての和訳が求められる文書ならば「その名を轟かせる」や「名を馳せる」と訳せばよいし、逆に読者の日本人が迅速に走り読みできる文書を求めているのであれば「有名な」と訳し、周辺の語彙のレベルとの整合性を合わせて読みやすい日本語の文章に仕上げていくことが一番大切だということです。


 外国語を勉強する人は、同時に日本語の教養と相手を置き去りにしない精神の涵養も必要だと思っております。