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リビア内戦って何?アラブの春とは? 流れをわかりやすく解説 ~国際情勢の基本的な教養~

当記事をご覧いただき、ありがとうございます。

中島です。

 

当記事では最後に「まとめ」として取得した知識の確認のために、簡単な問題を一問一答形式で用意しています。ぜひ、ご活用ください。

 

 

19年4月になって、北アフリカのリビア内戦の話題がにわかに各種メディアに沸き起こりました。

 

今月6日の毎日新聞等の情報によると、国家が分裂状態にあるリビアで、東側と西側の勢力が激突、本格的な内戦に突入するのではないかと心配されています。まさに、関ヶ原の合戦状態のようなものなのでしょうか。

 

今日はリビア内戦について、出来事の流れを追っていきます。

 

 カダフィ独裁と「アラブの春」

 

カダフィ独裁

2011年までリビアで事実上の独裁者として君臨していたのは、カダフィ氏でした。

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(カダフィ氏:DAILY BEASTより)

 

同氏は一軍人でしたが、1960年代に当時の王政リビアを打倒して、自らを同国最高指導者であると自称、2011年まで一貫して半世紀にわたり独裁者となっていました。ちなみに、「大佐」という肩書は本人が勝手に使用していただけで、そういう職階を持っていたわけではありませんでした。

 

「アラブの春」の伝播

そんな中、隣国チュニジアで2010年末から翌年明けにかけて大規模な反政府運動が発生、長期独裁政権のベンアリ政権が崩壊しました。

 

きっかけは果物を路上で売っていた青年が、警察官に侮辱されたうえに商売する権利さえも奪われてしまい、抗議を示すために焼身自殺してしまったというショッキングな事件でした。

 

この事件がFacebookやtwitterなどのSNS上で爆発的に拡散され、日頃から生活や人権で抑圧されていた国民の怒りや不満が噴き出して団結、大規模な反ベンアリ政権運動に発展していきました。まさに、時代を反映する事件ですね。

 

国境の概念がないSNSの情報伝達力は、周辺諸国の同じような独裁者をも震撼させました。

 

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(Googleマップより)


チュニジアの次にエジプト国内が混乱、ムバラク政権が崩壊しました。この怒れるアラブ諸国民の独裁政権に対する反発民主化を希求するエネルギーの波及を、「アラブの春」と呼びます。

 

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(エジプトの「アラブの春」:アルジャジーラより) 

 

特に北アフリカや中近東では石油が豊富で、独裁者はその富を国民に分配する一方で、国民の生活を厳しく統制する傾向にあり、権威主義(独裁)的となります。

 

 

 カダフィ政権も御多分に漏れず崩壊

 

上地図からわかる通り、チュニジア → エジプトと独裁政権が倒れる中で、間に挟まれたリビアのカダフィ政権も同様に崩壊していく流れは全く自然のことです。

 

「チュニジア・エジプト・リビアのイスラム諸国の革命の流れは、どのようなプロセスを経て民主化への道に繋がるのだろうか??」

 

この解が当時の世界の期待と注目の的でしたが、結論的には国家統治の方向感が失われ、迷走しているのが現状です。

 

それは「宗教」「豊富な資源」が大いに関係していると考えられます。

 

イスラム教の中には、世俗的な考えを拒絶する宗派も存在します。民主化というと、どうしても西洋的で自由主義的な考えを想起しやすく、イスラム諸国には浸透しづらい側面があります。

 

また、リビアや中東諸国は原油が豊富であり、既存の政治体制が保たれることによって権益を享受できる層とできない層が争っているという側面もあります。

 

リビア自体のカダフィ政権崩壊後の現在は、国際社会が支持している西部の新統一政府と、一部の国々が支持する旧カダフィ派の東側に分断されており、混乱状態と言えます。

 

この他、カダフィ政権崩壊後にはアルカイダ系武装勢力やイスラム国の勢力も台頭し始めたともいわれています。リビアの権力争いは単純に東西に分かれているのではなく、まさに地域ごとに群雄割拠している状態が続いているというのが本当かもしれません。

 

今後の影響

リビアは産油国ですので、内戦が大規模化すれば石油市場にも大いに影響が出てくると思われます。

 

「アラブの春」は北アフリカの独裁政権崩壊後にも衰えず、中近東にも波及しました。その中で最も有名なのは、シリア内戦でしょう。

 

シリア内戦では、これまた同じくして独裁権力を握るアサド大統領が民衆の反乱を抑えるのに成功したため、内戦が異常に長期化し、アサド政権の長期独裁が現在も続いています。

 

この内戦の背景として、つい最近までアサド政権との繋がりが深い軍事大国ロシアと反政府武装勢力を支援するアメリカ、混乱に便乗して現れたイスラム国、それに自国での少数民族の台頭を恐れるトルコなどといった様々なパートナーが自国の国益を虎視眈々と狙っていました。

 

もしリビアで内戦が再燃すれば、特に原油産出国ということもあって、背景の大国プレーヤーも続々と参戦してくるかもしれません。

 

 

リビアの大まかな流れについて

2011年:「アラブの春」の煽りを受ける。

2011年10月:リビアで反政府勢力が台頭。カダフィ殺害される。

2012-2014年:議会選挙で民主的な暫定政権が誕生するも、混乱する。

2014年:イスラム勢力が台頭。首都(西部側)を占拠

2015-2016年:国連の仲介もあり、統一政府が樹立。

それ以降:東部と西部(統一政府:首都)がまとまらず、混乱。19年4月に東西が衝突。

 

まとめ(一問一答問題)

 

(*答えは最下部にあります)

 

(1) 2010年頃、SNSを通じて団結した北アフリカ諸国のそれぞれの国民が、相次いで自国の長期独裁政権を崩壊させた動きを(               )という。

 

(2) (1)の運動で、チュニジアではベンアリ政権、エジプトではムバラク政権、リビアでは(             )政権が倒された。

 

(3) (1)の運動は中東のシリアにも波及したが、同国の(               )政権はロシアのバックアップも手伝って長期独裁政治を現在でも維持している。

 

 

 

 

 

 

 

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(答え)(1)アラブの春 (2)カダフィー (3)アサド

 

(※当記事に含まれる内容は2019年4月時点での情報です。情勢変化にご注意下さい。)