現役ロシア語講師によるロシア語勉強法

~ロシア語ガチ勢のためのブログ~

現代アネクドート。面白いロシアンジョークNO.1 ~「蛙の子は蛙」、他~

 

当記事を覗いていただき、ありがとうございます。本日は、現代のアネクドートを紹介しようと思います。ロシアが好きな方であれば、ほとんどの場合、アネクドートをご存知でしょう。

 

アメリカンジョーク

アメリカには、アメリカンジョークというものがあります。アメリカ社会では、聴衆の前に立つ演説や発表の場で、軽いジョークを挟むことが粋とされる場合があるそうで、その為、発表者は事前にジョークを用意しておく必要があります。

 

「THE NEW YORK CITY CAB DRIVER’S JOKE BOOK」という本があります。

 

著者はニューヨークで活動していたミュージシャン。副業としてタクシードライバーをしていた頃、賑々しい世界の中心地で活躍する「俳優」、「ウォールストリートの証券マン」「モデル」「ドラッグのバイヤー」などの幅広い社会層の人間を毎日乗せては、後部から飛ばされてくる様々なジョークを楽しみ、メモしていったそうです。

 

f:id:Worldaffairs:20190114225038p:plain

(本の画像はAmazonより)

 

ロシアのアネクドート

 

ジョークといっても、ブラックジョークから世界の民族などをネタにするエスニック・ジョーク、政治関連のジョークなどジャンルは多岐にわたります。

 

特に政治ジョークは堅い話の中に皮肉を込めるものが多く、ストーリーの背景に隠れている歴史や政治的な事象を事前知識として持ち合わせておく必要があり、ある程度の教養が求められるものも少なくないです。

 

殊にロシアのアネクドートはソ連時代の社会情勢や政治を自嘲するものが非常に多いです。

 

では、アメリカンジョークとロシアのアネクドートの根本的な違いはどこにあるのか?私は昔、あるロシア人に次のようなアネクドートを教えてもらったことがあります。

 

「アメリカ人は演説の前に、洒落たジョークを捻り出す必要がある。ロシア人の場合、今日ここに来る前に起きたことを正直に言えばそれがジョークになる。」

 

ジョークの両文化の違いについて、学術的な真面目な議論を抜きにすると、とてもとんちの利いた話だと思います。

 

アネクドートは毎日量産されている。

アネクドートはソ連時代の専売特権だと考えている人も中にはいるかと思いますが、実は、ロシアの矛盾だらけの社会や政治、日常生活を皮肉るアネクドートは毎日大量に生まれ、インターネットに溢れ出ています。

 

例えば、2018年にロシアではサッカーW杯が開催されましたが、その華やかな舞台の裏では、年金支給年齢の将来的な引き上げの話がクレムリンでは進んでいました。

 

この話が表沙汰になるにつれ、各種のインターネット掲示板では俄かにこの法改正を皮肉るアネクドートが噴出したのを覚えています。

 

茶番劇のような噴飯物の政治に対し、それを素早く気の利いたアネクドートに紡いでいくというロシア人の敏感さは、まさに世代間の技能継承と言っても過言ではないかもしれません。

 

前置きは長くなりましたが、早速現代のアネクドートをいくつか紹介していきましょう。今のアネクドートを知ることで、ロシアに住む人の日常の心の叫びを感じ取ることができるかもしれません。

 

(1)

みんなお金が足りないと感じている。ある人は新しいヨットの資金が足りず、ある人は新しい靴のための資金を探している。

 

これはアネクドートというより、教訓めいた真面目さが感じられます。ロシアも庶民の格差問題が深刻であり、貧困層が多いのも大都市を歩けばすぐにわかります。お金はあってもなくても、金銭への執着は皆同じということの教訓を含ませているかもしれません。

 

(2)

操縦士:「ねえ、ビールはいくらだい?」

乗務員:「あなたは操縦士ですよ。」

操縦士:「ああそうだった、じゃあタダだな。」

 

アルコールネタはアネクドートには不可欠ですね。酔ったロシア人の観光客が飛行機で暴れる事例が多いため、機内でのアルコール飲料販売規制ができたのも象徴的な出来事です。

 

(3)

父親がウソ発見器を買ってきて、早速試しに息子の指にはめてみた。

父:「お前は今日学校にちゃんと行ったか?」

息子:「当たり前だよ、父さん」

機械:「ビー、ビッビー」

息子:「ああ、わかったよ。実は友達と酒を呑んでたんだ」

父親:「何だと!?父さんはな、お前くらいの頃はアルコールが何なのかも知らなかったんだぞ。」

機械:「ビー、ビッビー」

母親が笑った。

「ははは、蛙の子は蛙ね。この子は本当にあなたの子だわ」

機械:「ビー、ビッビー」

 

ウソ発見器を用いたジョークはアメリカンジョークにでもよく登場します。だから、これは単なるジョークと言えそうでしょう。

 

当文の「蛙の子は蛙」ですが、Яблоко от яблони недалеко падает. という諺が使われていました。直訳すると、「リンゴはリンゴの木の周りに落ちる。」となります。

 

яблокоを使った他の有名なフレーズに Яблоку негде упасть.というものがあります。

「リンゴが落ちる場所がない。」

私が神戸に住んでいた頃、ルミナリエに一緒に遊びに行ったロシア人の家族が言っていました。群衆が多くて狭いことを示す表現です。

 

いかがでしたでしょうか。次回以降は政治ネタや他民族ネタなども含んでいこうかと思います。ありがとうございました。