現役ロシア語講師によるロシア語勉強法

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ロシア語文法解説 NO.2 ~接頭辞+移動の動詞~

当記事を覗いていただき、ありがとうございます。

中島です。

 

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本日は前回に続き、移動の動詞(または、運動の動詞)に接頭辞が付加された場合の動詞について説明していきたいと思います。その前に前回の復習を簡単に致します。

 

前回の復習


移動の動詞は定動詞と不定動詞の2種類に大別されます。しかし、両方ともそれぞれ完了体と不完了体の体を有しています。私たちが通常、参考書等で最初に習う動詞は不完了体のみとなります。一方、完了体は以下のような分類が可能になります。

 

★定動詞の完了体

接頭辞 по + 不完了体の定動詞・・・ 「初動の動作」または「一瞬の動作」を意味する。 

 

★不定動詞の完了体

不定動詞の完了体には、次の2つのパターンが存在します。

①接頭辞 по + 不完了体の不定動詞・・・ 「一瞬の動作」を意味する。

②接頭辞 с + 不完了体の不定動詞・・・ 「一往復の動作」を意味する。

 

上記の内容を具体的に知りたい方は、前回の記事をご覧下さい。

worldaffairs.hateblo.jp

 

様々な接頭辞+移動の動詞

 

さて、いよいよ、移動の動詞に様々な接頭辞を付加した場合の動詞について説明してまいります。前回の記事と同様、この分野に関する基礎知識の説明は極力、省略しますのでご了承ください。

 

移動の動詞に付加しやすい接頭辞の代表例として、под- / пере- / у- / от- / до- / вы- / за- / при- / про- などが思い付くかと思います。

 

ご存知の通り、これら各々の接頭辞と移動の動詞の定動詞が結びついてできる動詞の体は完了体になります。

例) подойти (完了体:接近する  *под- + идти)

 

一方、各々の接頭辞と不定動詞が結びついてできる動詞の体は不完了体になります。

例)подходить (不完了体:接近する  *под- + ходить)

 

問題なのは、こうした新しく生成される動詞群を、「移動の動詞」の範疇に入れるべきかどうかということです。結論から言うと、私自身は「移動の動詞」ではないと思っています。

 

そもそも、移動の動詞には定動詞と不定動詞のペアが存在しています。むしろ、このペアがあるからこそ、移動の動詞であるといえるかもしれません。

 

しかし、上記のподойти、およびподходитьを例にみると、これらの動詞には定動詞・不定動詞の概念がありません。意味の上から考えても、"往復しながら"「接近する」という不定動詞のような要素が入るのは不自然であることがわかります。ロシア語の「接近する」という動詞は、あくまでも「近づく」というニュアンスのみを強調する単語であり、一定方向や往復しながらという意味までは含意しないのです。

 

このことは、他の接頭辞+移動の動詞にも原則的に同じことが言えます。

● у + 移動の動詞:去る、いなくなる。

●пере + 移動の動詞:~に移動する、渡る。

●вы + 移動の動詞:出る。

●за + 移動の動詞:立ち寄る、深く入り込む。

上記に列挙したような動詞には、定動詞 / 不定動詞の区別の概念がありません。

 

 при+移動の動詞について

 

при+移動の動詞には、прийти (不完了体:приходить) / прибежать (不完了体:прибегать) / привезти (不完了体:привозить)  などがありますが、いずれも「来る」という意味を含意している動詞です。

 

注意されたい事項として、これら動詞の不完了体は、動作のプロセスを表すことができないということです。英語でいうところの現在進行形が存在しないということです。при+移動の動詞で生成される動詞の不完了体は、以下の2点の意味しか存在しません。

 

反復する動作

直近の未来を表す動作 

 

(例)

Мой племянник часто приходит в гости.  (私の甥っ子はよく遊びに来る。) (反復する動作)

 

Вся команда прилетает в Москву 20 августа. (チーム全員が8月20日にモスクワに到着してくる。)(直近の未来を表す動作)

 

では、「来る」という意味を現在進行中の動作(来ている)にしたいときは、どのような動詞を使えばよいのでしょうか? 

 

この場合、単なる移動の動詞の定動詞・不完了体を代用することで「こちらに来ている」というニュアンスを示すことができます。

 

(例) Вот и она бежит к нам. (ほら、彼女がこちらに向かってくるよ。)

(прибегатьはこの場合、使用不可)

 

尚、 у や подなどの接頭辞+移動の動詞で生成される動詞は、現在進行中の動作を表すことができます。

 

(例) Она смотрела на уходящий поезд. (彼女は去り行く列車を見ていた。)

 

(例) Он почувствовал, что кто-то подходит к нему сзади. (彼は誰かが後ろから近づいてくるのを感じた。) 

 

いかがでしたでしょうか。移動の動詞についての解説はここで一旦終了させていただきます。ありがとうございました!