現役ロシア語講師によるロシア語勉強法

~ロシア語ガチ勢のためのブログ~

「ロシアは世界中から制裁を受けているのに、ルーブルが強いのはなぜですか?」生徒さんからよく受ける質問

ロシアによるウクライナの軍事作戦が始まって早くも80日を過ぎましたが、最近よく受講生の皆さんから、ロシアは経済制裁されているのに、どうしてルーブル高が進行しているのですか?と質問をよく受けますので、私の回答を書かせていただきます。

 

🚩回答
まず世界の国の数から言うと、ロシアに経済制裁を課している国の方が少ないです。
ですが、制裁を課している国のリストの中には経済的に豊かな西側諸国がほぼ全て含まれているので、ロシア経済に打撃を与えることはほぼ間違いないと言えます。

 

さて、ルーブル高が続いている原因ですが、それはロシアが国内でのルーブルの売却を厳しく制限しているのと同時に、ルーブルが国外に流出するのを必死に防いでいるためです。

 

なぜなら、国内に残っているルーブルに関しては取引規制などで売買を管理できる一方で、一旦ルーブルが国外に逃げてしまったならば、その売却を取り締まることはできないからです。

 

具体的には、ロシア政府は海外と取引している国内企業に対して、営業で得られた利益の大半をルーブルに交換するように義務付けています。

また、西側諸国からの貿易禁止により様々な輸入品の物不足がロシア国内で発生していますが、少ない商品に対するルーブルの量の多さから起因する物価高騰を防止するため、中央銀行が金利を20%(今は17%ほど)まで上げました。

 

また、ドルやユーロとの交換手数料を高く引き上げるなどして、一般の国民もルーブルを売却しずらい状況を作り出しています。

 

このようにして、一生懸命ルーブルの暴落を防ぐことによって国際的な面目を死守しようとしているのですが、代償はそれ以上に大きいと思われます。

 

見かけ上のルーブル高を演出することの犠牲

まず、金利が物凄く高い(最低で17%)ので、国内企業はお金を借りることができなくなり、事業への投資や新規採用などを控えます。また、国民も銀行にお金を預けた方が見た目は増えるので、購買意欲を失います。

 

結果として、今後のロシアはこのまま制裁が続くと、激しい不況に見舞われることになり、失業者が増えることになります。また、このことによって犯罪が頻発し、治安が悪化していくことも容易に想像がつきます。

 

進攻前のロシアは日用品からインフラ産業の部品まで輸入に頼っていた国ですので、輸入ができなくなる以上、今後は物不足からくる激しいインフレに襲われると予想されます。

 

中国やブラジルなどがロシア製品を買い、ロシア向けの輸出を継続するという希望的観測も多いですが、前述の通り、大規模な経済を誇る西側諸国からの貿易停止はどちらにしろ大きな打撃になります。

 

なぜなら、中国などの新興国では日本や欧米などの先進的な半導体技術がまだ十分に確立されておらず、今までの西側べったりだったロシアのハイテク産業部門はその製品などの業務上の保守ができなくなるからです。

 

また、ロシアを経済的・軍事的に支援することによる米国などからの二次的な経済制裁を自国にも課されるのではないかと、恐れている可能性がこれらの国にはあるからです。

 

ロシアがガスや原油を売って、外貨を稼ぎ続けているのは本当ですが、長期的目線を常に持っている国家の首脳や投資家から見れば、ロシア市場はもはやカントリーリスク(その国の政治・外交方針から予想できる投資的リスク)以外の何物でもなく、今後はロシアからの天然資源の購買と投資を控える方向に流れていきます。


もしあなたが100億円をもつ社長さんだったら、ロシアと他の国と、どちらに投資したいかを考えてみてください。

 

ロシアでは既に原油がだぶついていたり、天然ガスを輸送せずに精製所で燃やしたりし始めています。

 

結論的には、ここ直近で欧米諸国が突然何らかの理由で激しく凋落しない限り、残念ながら、ロシアの中期的な未来は暗いと私は考えています。

 

歯止めのかからない円安はロシア経済の混乱から?

ちなみに、現在日本で懸念されている円安進行ですが、この要因をロシア経済に求める人が若干いますが、一般的に解釈されている要因は米国の金融政策にあるとされます。

 

米国は今、コロナ後の景気回復によりインフレが加速していて、経済の過熱を抑えるために金利を上昇させる政策を行っています。

 

投資家としては、より金利が高くて利益が得やすく、しかも安全な米ドルで資産運用をしようと考えますので、保有する日本円を売る行動に出ます。

 

ロシアはあれだけ国土が広いのにもかかわらず、経済は韓国経済ほどの小さい規模です。それよりも経済大国である日米の金融政策の動向の方が、市場に与えるインパクトがはるかに大きいといえます。

 

「円はルーブルよりも安い」というのは、ロシア政府が見せる「擬態」に恐れ慄いている人の弱音としか言いようがありません。