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本日もロシア語の副詞の解説の続きを書いていこうと思います。
前回までは、下[図2]の①形容詞、副詞、動詞を修飾する副詞の7種類を説明しました。本日は、これら副詞の特徴と留意点、それから②述語副詞の説明をしたいと思います。
ロシア語の副詞の特徴と注意点
他の品詞を修飾するための副詞には、
[1] 単語が格変化しない
[2] 語尾が -о ではない副詞も多く存在する
[3] 名詞が副詞化するパターンもある
[4] 副詞以外の品詞の顔を持つ単語も存在する
[5] 1単語だけではない副詞も存在する
という性質を持ちます。定義だけではわかりにくいので、[1]から順番に詳述していきます。
[1] 単語が格変化しない
形容詞や名詞、代名詞などは文の中で様々に格変化しますが、副詞には格変化がなく、不変です。
(例文)
[1]-1. Главный герой влюбляется в весьма красивую девушку. (主人公は実に美しいその女の子に惚れてしまう。)
[1]-2. кукла с постоянно растущими волосами. (常に髪が伸び続ける人形)
1.の方は、красивая девушка が、"влюбляться в + 対格" の語法に従って対格に変化していますが、これらを修飾する副詞の весьма は変化していないことがわかります。
また、2.では、растущие волосы (成長し続ける髪の毛)が、"с + 造格" の語法に従って造格になっていますが、副詞の постоянно は不変のままです。
[2] 語尾が -о ではない副詞も多く存在する
例として、хорошо (上手に) や коротко (短く) などの典型的な副詞はそれぞれ、形容詞の хороший(上手な)、короткий (短い) から作られる副詞であり、形容詞の短語尾中性単数の形です。こうした経緯から、これらの副詞は語尾が -о であるという性質を持ちます。
しかしながら、すべての副詞が形容詞から生成されるわけではなく、以下の通り様々な語尾を持つ副詞が多く存在します。
(i) 語尾が -ски の副詞
(例)
● экономически (経済的に)
● по-дружески (仲間のように)
● практически (事実上)
(ii) 語尾が -ще の副詞
この型の副詞は、能動形動詞から生成されます。
(例)
● ужаcающе (恐ろしく)
● торжествующе (勝ち誇ったように)
● блестяще (光輝くように)
(iii) 語尾が -ему,-ому の副詞
по+ 与格の語法が、そのまま副詞になった形です。
(例)
по-моему (私のやり方で)
по-вашему (あなたのやり方で)
по-видимому (見たところ、おそらく)
(iv) その他の語尾
語尾が -о で終わらない単語も非常に多いです。既出の例にも多くありましたが、他にも、крайне (極限に)、издали (遠くから)、сбоку (脇に) など無数に存在します。
[3] 名詞が副詞化するパターン
名詞の造格形が副詞として一般化した単語も多くあります。
(i) 時間の概念を表す名詞の副詞化
(例)
● утром / днём / вечером / ночью (朝に/昼間に/晩に/夜中に)
● весной / летом / осенью / зимой (春に/夏に/秋に/冬に)
● ранним утром (早秋に)
● одним прекрасным утром (ある清々しい朝に)
3、4つ目のように、もともとの名詞に形容詞が付随して共に造格形になり、統合して副詞化するパターンもあります。
(ii) 一般的な名詞の副詞化
(例)
● следом (後に続いて: 名詞 след の造格)
● бегом (走って: 名詞 бег の造格)
(iii) 「様態の造格」
そもそも、文脈によっては名詞を造格に変化させることにより、主語の様態(状態)を(比喩的に)表すことがあります。これを、様態の造格と呼びます。
(例文)
[3]-1. Её улыбка светит солнцем. (彼女の笑顔は太陽のように輝いている。)
[3]-2. Время летит стрелой. (光陰矢の如し)
1.も2.も、солнце (太陽)、стрела (矢) という名詞を造格変化させることで、主語の様態を表していることがわかります。これを「様態の造格」と呼ぶことができる一方で、文中では副詞としての役割を担っていることにも気づかされます。
[4] 副詞以外の品詞の顔を持つ単語
副詞の中には、他の品詞として文中に登場する単語もあります。このことに留意しておかないと誤訳に繋がりかねないので、注意が必要です。3つの例を見てみましょう。
(例1) вокруг
●副詞としては、「周りに」という意味になります。
●前置詞としては、後に生格を伴って、「~の周りに」という意味になります。
(例文)
[4]-1. Я осмотрел вокруг. (私は周囲を見回した。副詞として使用)
[4]-2. Земля вращается вокруг солнца. (地球は太陽の周りを回っている。前置詞として使用)
(例2) напротив
●副詞としては、「向かいに」という意味になります。
●前置詞としては、後に生格を伴って、「~と向かい合わせに」という意味になります。
[4]-3. Он живет напротив. (彼は向かいに住んでいる。副詞として使用)
[4]-4. Он сидел напротив меня и читал книгу. (彼は私の向かい側に座って、本を読んでいた。前置詞として使用)
(例3) много
●副詞としては、「たくさん、多く」という意味になります。
●(数量)数詞としては、後に生格を伴って、「多くの」という意味になります。
[4]-5. Он много занимается. (彼はたくさん勉強する。副詞として使用)
[4]-4. Там много народу. (あそこは人が多い。(数量)数詞として使用)
[5] 1単語だけではない副詞も存在する
2個以上の単語が一括りになっていて、副詞的な役割を担っているものも存在します。これらは通常、単語同士が伝統的に結びつきやすく、そのままイディオム化して副詞になってしまったケースが多いです。
(例)
с разлёту (全速力で)
со зла (癪にさわって)
носом к носу (ばったり)
(例文)
[5]-1. Птицы c разлёту врезались в дверь. (鳥たちは勢いよくドアに突進した。)
②述語副詞
副詞が持つもう一つの顔が述語副詞になります。前回までの2回と上記に説明した副詞とは、他の品詞を修飾するためのサポート的な役割を担う品詞でしたが、ここで言う述語副詞とは、文中における述語、すなわち文のメインとなる品詞になります。
1. Сегодня холдно. (今日は寒い。)
2. Мне холодно. (私は寒い。)
3. Мне жалко, что вы скоро уезжаете. (私はあなたがもうすぐ去ってしまうのが惜しい。)
1~3までの青文字の原文の単語すべてが述語副詞になります。日本語訳を見ても、文の中でメイン(述語)の役割を担っていることがわかります。
無論、холодно は 「冷たく」、жалкоは「情に訴えかけるように」というように、他品詞を修飾するための品詞にもなります。
(比較)
他品詞を修飾するための副詞と、述語副詞を例文を用いて比較してみます。
4. Она грустно плачет. (彼女は悲しそうに泣いている。)
5. Ему было грустно, что жена не вспомнила его перед смертью. (彼は妻が死ぬ直前に自分を思い出してくれなかったことが悲しかった。)
4.の грустно は動詞 плакатьを修飾する副詞、5.は述語副詞としての грустно になります。
●述語副詞の特徴と注意点
述語副詞が使用される文の最大の特徴は、それが無人称文になるということです。無人称文とは、「主格の主語が存在しない文」のことをいいます。
上記例文のうち、1.~3.および5.を見てみると、主語がない、もしくは主語が与格になっていることに気づかさます。
特に、2.や5.の例文の主語を、逆に主格にしてしまうと意味が変わってしまうので注意が必要です。
2.の場合、「私」を主格 Я にしてしまうと、「私は冷たい人間」というニュアンスに捉われかねません。「(私にとって)寒い」ので、主語は与格となります。同様に、5.で「彼」を主格 Он にしていまうと、「彼は悲しい人間」と捉われかねません。
いかがでしたでしょうか?副詞の役割について、三回に分割して説明してきました。勉強の一助になる箇所が一つでもあれば幸いです。ありがとうございました!