現役ロシア語講師によるロシア語勉強法

~ロシア語ガチ勢のためのブログ~

ロシア語文章読解 練習問題NO.2 ~詳しい解説付き~

 

当記事を覗いていただき、ありがとうございます。

 

本日は、前回に引き続き、ロシア語学習者向けの露文和訳問題を出したいと思います。想定としては、ロシア語能力検定試験2級以上への対策も意識しています。

 

解答・解説は問題の写真の下に記載しております。尚、日本語の解答はできるだけ逐語的な和訳を努めますが、自然な日本語の出来上がりを重視するため、多少ずれることがあります。

 

(問題編 NO.2)

問: 以下のロシア語を和訳しなさい。

 

Мотив дороги часто встречается в русском искусстве. Дорога, идущая по бесконечным пространствам России, зачастую рождала грустные чувства. Вот и на этой картине еле заметная фигура странницы среди бескрайней равнины вызывает мысли о бесприютности человека, о его одиночестве.   

(ロシア芸術に関する本より抜粋)

 

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(レヴィタン作『ウラジーミル街道』1892年)

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(解答編 NO.2)

ロシア芸術において、「道」を題材にしたものは数多く見受けられる。ロシアの広大無辺な空間へと伸びる「道」は、しばしば物悲しい感情を誘ってきた。画中では渺渺たる原野の中に放浪者の女性がかろうじて確認できるが、こうした姿はわびしさや孤独感といった人間の感情を想起させる。

 

 

(解説編)

始めに、当文章では、同じ(または、似た)意味を表す言葉が異なる単語として登場しているケースが4か所あったことに気づくことも重要です。具体的には、

① часто と зачастую

② бесконечный と бескрайний

③ рождать と вызывать

④ чувство と мысль

このように、ロシア語の文章においては、英語と同様に言い換えの表現がしばしば用いられます。

 

 

 <一文目>

 Мотив дороги часто встречается в русском искусстве. ロシア芸術において、「道」を題材にしたものは数多く見受けられる。

 

● встречаться は、遭遇する、目に入る、といった意味の動詞です。不完了体として登場しています。他にも文脈次第では、(男女が)交際するという意味にもなる動詞です。

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<二文目>

Дорога, идущая по бесконечным пространствам России, зачастую рождала грустные чувства. ロシアの広大無辺な空間へと伸びる「道」は、しばしば物悲しい感情を誘ってきた。

 

● идущая は、移動の動詞のうちの定動詞である идти の能動形動詞 現在 女性 単数 主格の形です。"行っている"、"向かっている"といった意味になるでしょう。前置詞 по は多義語ですが、移動の動詞が登場する当文においては、「~に沿って」、「~をたどって」(与格支配)といった意味になります。主格は дорога であり、"ロシアの果てしない空間に向かっている「道」"といったニュアンスになります。

 

● зачастую は、一文目の часто の言い換え表現となります。ともに、「頻繁に」を意味する副詞です。

 

● рождать は産む、生み出すの意味。грустный は、т を発音しません。「グるースヌィ」といった発音です。

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<三文目>

Вот и на этой картине еле заметная фигура странницы среди бескрайней равнины вызывает мысли о бесприютности человека, о его одиночестве. 画中では渺渺たる原野の中に放浪者の女性がかろうじて確認できるが、こうした姿はわびしさや孤独感といった人間の感情を想起させる。

 

● Вот и は強調表現になります。敢えて訳するなら「ほらっ」等となりますが、当文においては、読者に対して絵に注意を促しています。

 

● 当文では、еле заметная фигура странницы среди бескрайней равнины が主語の部分となり、その動作である вызывает が述語となります。еле から直訳すると、"無限の原野の中で、かろうじて見える女性の放浪者の姿" となります。 

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~レヴィタンと移動派について~

 

イサーク・レヴィタンは1860年に現在のリトアニアカウナス地方に生まれました。ロシアの美しい自然を題材にした作品を数多く残した稀代の風景画家です。(写真は24СМИより)   

 

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画家が属していた移動派(передвижники)には、西欧美術の模倣ではなく、ロシアの歴史や風景、風俗といった現実に光を当てる写実主義画家たちが集まっていました。

 

1870年ごろの帝政末期において、クラムスコイ、アイヴァゾフスキー、レーピンなどといった画聖が活躍しています。

 

彼らは地方を巡回移動しながら展覧会を開催する中で、積極的に民衆と接触しながら芸術の普及を目指していたので、移動派(移動展派)と呼ばれました。

 

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(イヴァン・クラムスコイ『見知らぬ女』: МУЗЕИ МИРАより)

 

 

 

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(イヴァン・アイヴァゾフスキー『月光に照らされたコンスタンティノープル』: aria-art.ruより)

 

 

 

 

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(イリヤ・レーピン: 『何という広がりだ!』МУЗЕИ МИРАより)

 

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