現役ロシア語講師によるロシア語勉強法

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外国語の習得方法について (単語編)

当記事を覗いていただき、ありがとうございます。

中島です。

 

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前回までの「外国語の習得方法」シリーズでは、文法の勉強を大前提として、4つの能力の要素である、読解・聴取・作文・発話の具体的な学習方法を個別に説明してまいりました。本日は番外編として、語彙(い)力の増強の意義と学習法を解説します。

 

単語は語学の能力を補強する役割

 

ロシア語の学習者を見ていると、よく文法の習得が曖昧であったり、作文の練習が不十分のまま、単語帳の勉強に一生懸命になる人がいますが、それは順序が違います。いくら難しい単語を沢山覚えても、文法知識が不十分のままであれば、文章読解の誤訳を頻繁に引き起こしてしまいます。また、基礎的な文章構成能力が備わっていないまま語彙力だけが強まっても、その単語を自由自在に応用してメールを書いたりすることはできません。

 

このような理由から、語彙力の増強は、文法と他の4つの能力要素をある程度習得した中級者以降が始めるべき勉強といえるでしょう。初学者は、これらの要素を勉強する過程において、文法書なり、リスニング教材なりで紹介されている重要単語をしっかりと覚えていけば、それで十分でしょう。わざわざ、単語帳を購入する必要性は特にはありません。

 

無論、中級者以降への進歩を目指すのであれば、その過程においてボキャブラリーの増強は避けて通れません。語学のレベル向上とは、より複雑かつ抽象的な内容の読み書きや会話ができるようになることであるからです。

 

例えば、糖尿病に関する記事を読んでいるとき、diabetes という単語一つを知っていたかどうかで、その記事の全体像を把握するスピードや読解精度が格段に変わってしまうでしょう。

 

また、ネイティブスピーカーに向かって糖尿病の話をしたいと思った場合、この一単語を知っていれば、相手はあなたがどういった話題を持ち掛けているのか即座に判断できるし、逆に知らなければ、わざわざ「血液中の血糖値が一定の割合を越えている状態の症状」といったような複雑な説明に入っていかなければなりません。

 

つまり、通訳など語学の上級者ほど、語彙のレベルアップは「日々是鍛錬」なわけです。

 

単語は「日本語⇒外国語」の方向で覚える

 

外国語が積極的に話せるようになるためには、新しい単語を覚える時、必ず「日本語の単語から外国語の単語に訳す」という方向勉強してください。つまり、 diabetes という単語を見た時に、「糖尿病」と答えられるようにするのではなく、「糖尿病」という日本語を見聞きした時に、diabetes と答えられるようにして下さい。

 

単語カードを作る習慣のある人は、カードの表に日本語を、めくった裏にその外国語訳を書くようにして下さい。アルファベットの綴りを完璧に覚えるだけでは不完全です。発音もセットで覚えられるように、普段の勉強の時から、常に音読するクセを付けて下さい。普段から単語を音読する習慣がないと、ネイティブとの会話の時に、言いたい単語が口から絶対に出てきません。

 

単語は語法、例文とセットにして覚える

 

単語を単純に多く知っていれば、それだけで語学では優位に立つことも本当の話です。diabetes という単語さえ知っていれば、極端な話、I am diabetes. とか I have diabetes. と言ったとしても、ネイティブには「ああ、この人糖尿病を患っているんだな」と理解してもらえるでしょう。

 

しかし、このような大雑把な勉強法ではレベルアップは到底望めません。もっと細かくて抽象的な内容を伝えたい場合、どうしてもそこには文法や語法の正確性が求められてくるからです。

 

あらゆる単語には、それぞれ語法(その単語を文中で使用する際のルール)や、親和性(他のどの単語と結びつきやすいか)など、決められた法則が備わっています。残念ながらそれらを軽視したまま外国語で作文すると、とんちんかんで理解不能な文章ができあがってしまいます。日本語でも、例えば「私は和夫くんは公園で車に行きました。公園で私は和夫は愛の告白をしました。」と言われた場合、聞き手は内容を正確に把握できないでしょう。

 

つまり、単語というのは、文中で使う際の定められたルールも一緒に覚えないと、宝の持ち腐れになってしまうわけです。新しい単語を覚える時は、必ず辞書で語法とそれを用いた例文もセットで覚えるようにして下さい。

 

ロシア語での実例を挙げましょう。単語カードで「手伝う」を помочь と書いてそれだけ覚えたとしても、1割くらいしかその単語を知ったことにはならないでしょう。まず、помочьの過去形は特殊変化であり、しかも不完了体も覚えなければなりません。他にも、手伝うということに関して、「誰を」という目的語は何格を要求し、「何を」という目的語はどういった形で表現すれば正しいのか、というところまで突き詰めていかないと、помочь を自分で使いこなすことは不可能でしょう。こういった場合、辞書(下の例は研究社の辞書)では以下のような2つの例文をセットに覚えれば良いでしょう。

 

1. помочь кому в работе. (~の仕事を手伝う。)

2. Она помогает мне изучать китайский язык. (彼女は私の中国語の勉強を手伝ってくれる。)

 

1と2の例文より、помочьの不完了体はпомогатьであること、手伝う対象の人は与格になること、手伝う対象の事物は в + 前置格、または動詞の原形 であることがわかります。

 

このようにして、単語は語法と例文をセットにして覚えていきます。あとは自分で各単語を他の単語に置き換えていけば、正確な文章を書けるようになっていきます。単語カードでは、是非この語法と例文も漏れなく追記していって下さい。

 

市販の単語帳は特に買う必要はない

 

あなたの学習がどんどん進捗し、リスニング教材や文章読解専門の教材などで勉強を進めると、その度に新しいワードに遭遇していくはずです。それらをコツコツ、遭遇する度に語法と例文を一体的に覚えていけば十分です(勿論、日本語⇒外国語の方向で)。

 

その代わり、たとえ教材にそれら単語の訳が載せられていたとしても、必ず毎回辞書を引いてください。売れ行きの良い辞書には例文と語法が余すところなく豊富に記載されています。これらを自作のカードなりノートなりに写し、怠らずに覚えていくか否かで、読解能力、語彙力、作文能力、などのあらゆる能力要素に見違えるような実力の差が生じていきます。

 

以上です。ありがとうございました!

 

 

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